モンテッソーリエレメンタリー(小学生)の中に「植物学」という分野があります。もう一つ「動物学」もあります。この二つは別のもののようですがつながりがある分野です。今回は「植物学」の紹介と、幼児期からの大切なつながりについて少しお話をしたいと思います。
【1】植物学の目的とは
・乳幼児期の目的
散歩をした時に花を摘んだり、枯れ葉を踏んでみてクシャっと音がしたり。乳幼児期の子どもたちは、家の中の世界とは違う自然の世界に心を躍らせます。
※春にまいた種が育った様子を見ています。
そうして何気なく自然と触れることで、知らず知らずのうちに自然界とのつながりを実感していきます。
もちろんはっきりとした「つながり」を認識することは難しいかもしれませんが、感覚的にそう感じていくようです。
そしてその経験が、次のステップにつながっていきます。
・小学生の目的
小学生になったら、幼児期の体験を元にもっと具体的な目標に移行していきます。
「植物は何をしてどんな役割があるのか」
「植物が地球と人間にとってなぜ重要なのか」
を理解することにあります。
そして、植物に感謝と畏敬の念を持つようになります。
感覚器官の発達が目覚ましい幼児期には、実物に触れる機会が大切で、小学生になるともっと具体的に知りたいという思いが出てきますので、より深く詳細を学ぶことができます。
ただ、幼児期に植物に触れる機会が極端に少なかったり、共感してもらえる機会が少なかったりした場合は、なかなか「詳細」に興味は出てきませんので、乳幼児期を大切にお過ごしいただくと良いと思います。
また、モンテッソーリ教育では、感覚器官の発達が目覚ましい幼児期の子どもたちにはまず五感を使った学びをし、その後徐々に抽象的でより詳細な学びにつなげていくと良いかと思います。
【2】幼児期にできる体験
・自然に触れる体験~家の近く~
何より自然に触れる機会が大切です。
我が家の近くにある夙川。
保育園に行くときは、舗装道路を通る方が早く歩きやすいのですが、あえて緑あふれる川沿いを歩き、四季を感じていました。
時には図鑑をコピーして作った「自然ブック」を片手に、春の有名な草花を探し歩いたこともあります。
ただ、子育てが大変な時期に、あえて何かをしなければならない作業は長続きしません。
公園などを歩くときに、「少し目に留める」程度でも十分自然に触れる機会になりますので、無理をしないことが一番です。
・自然に触れる体験~おでかけ~
山に出かける、いちご狩りに行く、サツマイモ堀り、田植え体験をする、植物園に行く、キャンプ体験等々。
家の近くに自然がなくても、たまにそんな時間を作るのもいいでしょう。
ただ、「子どものために出かけなくてはいけない」と、それを心に負担を感じる方もいらっしゃいます。
たくさん行ったから、難しい体験をしたから良いということでもなく、
家の近くでも自然は十分感じられます。
また、幼稚園や保育園でも指導要領に基づいて、たくさんの機会を作られていますので、こちらも無理をしないことが一番です。
・家に花を飾る
せっかく花を飾ったのに「見もしない」。だから「花を飾ることに躊躇します」という相談をよく受けますが、子ども達が見ていないと感じるのは、きっと言葉に出さないから。言葉に出さなくてもちゃんと飾られた花を見ています。
子ども達は「今日ね家に赤い花が飾られていたの」「お月見があるでしょ。だからね、ママがススキを飾ってくれたんだよ」と
私たち先生にはちゃんと伝えてくれています。
「一緒に飾られたんですね」とお迎えに来られたお母様に伝えると、「私が好きで飾っていただけなのに、見てたんだ。」等と驚かれることがあります。
子ども達はちゃんとその行動を見て感じているのですね。
中学生になった息子も「春になったらいつもラナンキュラスの花が飾られているから、この花が好きなんだよな」と突然話されびっくりしました。
・忘れてはいけない大切なこと
大切なことは目標を見失わないことです。
子どもにとって良いからと無理をしたり、大人中心の楽しみになってしまわないこと。
子ども達は、大そうなことを期待していません。
大切なことは、子どもの目線に合わた自然への気づきに対して一緒に会話をしたり共感することだと思います。
信頼できる親御さんに共感してもらえる体験の中で、子どもは自分の中に確固たる「自然と自分との距離」を感じることができると思います。
遠出に力を入れすぎて目的が変わらないように気を付けて下さいね。
【3】幼児期におすすめの教材
・年少~年中のおすすめ
①つばめの家の教室でも大人気の「つちの上つちの下」の のりはりです。
当店で販売中です。
【つちの上つちの下ののりはりの目的】
・のりをつける練習
・身近な果物や野菜に触れることができる
・実り方を知ることができる
我が家では、こののりはりをした後、冷蔵庫の中を見て野菜を並べてみたことがあります。
「木になるものって他にもあるかな、調べてみよう」と図鑑を見ると、バナナもパイナップルも梨も木になっていた。
↓
その後年長の時に「梨狩り体験」をして、梨が木になっていること確認しました。
「土の下にできるものはサツマイモの他に、ジャガイモもあるし、ゴボウもある」
娘が「まさか私たちが根を食べていたなんて!」と驚いたことを覚えています。
②他にも、植物だけを抜き出したパズル(こちらは※モンテママのたからものさんで購入しました)
少し慣れてきたら、パズルの右に置いています名前つけカードなども用意してあげると良いと思います。
幼児期はこの名前つけまでで十分です。
説明文は必要なく、詳しいことも無理に進めないようにすると良いかと思います。
・年中~年長のおすすめ
①年長になったら、「じめんのうえとじめんのした」のこの本が役立ちます。
この本では「動物と植物の関係」が学べます。「つちの上つちの下(本付き)」
冒頭にモンテッソーリエレメンタリーでは動物学も学ぶと申していましたが、
植物のおかげで人間はここに存在できると感じし、つながりを感じられます。
もし年中で読んだとしても、年長になったら再度この本を読んであげてほしいです。
②年中ごろから、「花の水切り」に挑戦するのも良いかと思います。
こちらはつばめの家で販売しています。
実際に自分で摘んだ花を、丁寧に水切りします。
花は水が必要で、水がダメになると花も枯れてしまう。そんな事実を身をもって知っていきます。
また花は、人を楽しませてくれる存在でもあります。
誰かのために花を生け、喜んでもらう体験もモンテッソーリ教育では大切にしています。
【4】小学生になってからできること
・より具体的に詳細を学ぶ
小学生になったら、
①植物の部位の名称を知る
②植物それぞれの役割を知ることを大切にしています。
つばめの家では小学生文化クラスを開催しています。この写真は先日の小学2年生の子どもの様子です。
少し難しい内容と、作業になり、毎回子ども達はへとへとになってしまいますが、
まず先生のストーリーを聞きその後、カードと本を作ります。
もちろん説明文も書くのでとても大変な作業ですが、小学3年生までに、「読む、書く」ことが仕上げられるようにすることも目的の一つですので、
この段階までは、時間をかけて進めていきます。
何気なく見ていた植物にもちゃんと名前があって、それぞれが役割を持っている。「すごい!えーそうだったの!これ知っている!」と私のストーリーを集中して聞いている子ども達でした。
小学生になると、知っていることも増えます。
幼児期に自然に触れた体験が、ここで爆発するように次から次へと言葉であふれ出します。
そうすると、数年前に「幼稚園の先生や親御さんと一緒に植物体験をしたんだろうな」とその時の映像が見えるようで私も愛おしく感じます。
・小学校教師として言えること
モンテッソーリの小学校も、日本の公立の小学校もアプローチの仕方は違いますが、指導要領に基づき、「小学校で身に着けたい力」が学びの中に含まれています。世界のどこにいても、子ども達の成長のスピードや発達段階は同じ。だから、年齢に合った内容を「理科」で学べるようになっています。
学校の勉強や課題は最低限しっかりと取り組まれると良いかと思います。特に3年生(3y)では、「観察」「書くこと」「まとめること」はモンテッソーリエレメンタリーでも大切にしている過程です。これを参考にお子様のノートやプリントを一度のぞいてみてください。
【5】自然体験の応用編
・生き物の種を次につなげる
我が家の近くに農園を借り、そこで野菜や果物を育てています。自分たちが食べるのはもちろんですが、教室の子ども達に植物がどのように育つかきちんと説明できるように観察し、試行錯誤しています。
キュウリは少し経つとお化けのようになります。その種を次に残すために、種を取り出し、乾燥させておいておきます。これも以前小学校に勤めていた時に、3年生のお子さんといっしょによくしていました。
キュウリは水につけて沈んだ物だけを丁寧に取り出します。沈んだものは種の中身がしっかりと詰まっていて次によい作物が育つからです。
・スケッチする
モンテッソーリエレメンタリーでは、紙と鉛筆をもって外にスケッチをする作業をよくします。
スケッチが出来なくても、植物を目の前にして好きなように絵を描いてもいいかもしれないですね。
・花の分解をしたりスクラップをしたり
写真をコピーしてノートに貼ったり、おしべやめしべや花弁を分解して紙に貼る。
※これは@hidukinomori.ouchi のインスタグラムにも以前投稿しております。
・カードを作る
モンテッソーリエレメンタリーでは、名前や詳細を知るために絵カードを作ります。
これらは私の息子に描いてもらった植物ですが、このように絵を描いて、名前カードを作って照らし合わせます。
Aのカード→ 絵のみのカード
Bのカード→ 絵の下に文字が書いてあるカード
Cのカード→ 名前のみのカード
最初はAだけ。次にBだけ。次にAのカードにCのカードをつける。最後にBのカードで答え合わせをします。
つばめの家の文化クラスでは説明文も加わります。
【6】植物学のまとめ
・植物学は奥が深い
幼児期からの何気ない遊びや触れ合いが、植物と人間のつながりにまで発展していきます。「小学生になりました。さて理科で植物を始めます。はい、名前を覚えてね。」では子どもの心になかなか響きません。子どもに何を伝えるために「理科を学ぶのか」という根本的なgoalが大切ですね。
・興味がないは触れていないだけかもしれない
植物が好きでないので、興味も持てませんというのは、もしかしたら触れる機会が少なかったからかもしれません。行事ごとに家に花を飾る。子どもが見つけてきた花をコップに入れて飾るだけでも、子どもの見る目が変わってくるかもしれませんよ。私も、他の分野で当てはまることがたくさんです(汗)
ぜひお子様と楽しいひとときを。
プロフィール
藤原愉美/YUMI FUJIWARA
大学の時に初めてモンテッソーリ教育に出会い、子どもは人格者であり一人の人として育てる事の大切さを学び感銘を受けました。その後、モンテッソーリ幼稚園幼稚園・市立幼稚園小学校での勤務の後、モンテッソーリ教室「つばめの家」を開講し、約24年もの間モンテッソーリ教育に携わり、勉強と研究を重ねてきました。今後も家庭でできるモンテッソーリ子育てやおすすめなど発信していきたいと思います。
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